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Bull社による、フランス家族手当金庫の基幹システム切り替え

〔訳・編〕 NTT オープンソースソフトェアセンタ 坂田 哲夫


この記事では、海外のPostgreSQLコミュニティで話題になった、Bull社によるフランスの社会保障システムでの事例をご紹介します。メインフレームで稼働していた大規模システムを PostgreSQL と Linux の上に移行したもので、大組織での基幹システムの事例として興味深いものです〔訳者〕

プロジェクトの概要

  • オープン性と性能を保証するべく設定された、世界的な統合プロジェクト
  • 最新のオープンソース技術による実証済みの堅牢性と重要な業務プログラムの負荷に対応する能力
  • オープンソースのデータベースであるPostgreSQLへの移行 / かつてない規模での運用

フランスの全国家族手当金庫 (The Caisse Nationale d’Allocations Familiales (CNAF)) は、フランスの社会保障機構の中の家族のための支局であり、 2009年には1100万人の申請者に対して約690億ユーロの給付金を支給しました。 CNAFはgcos8上で稼働する Interel-RFM2 データベースから PostgreSQL への移行 をBull社に依頼しました。この決定は、CNAF はオープンソースのソリューション に移行するという公約をより確実にするものです。その結果、PostgreSQL は CNAF が請求者に毎月30億ユーロの給付金を支払う際に利用されています。CNAFは、 RSA (Revenu de solidarité Active; 積極的連帯所得手当 (*1)) などのフランス政府の低所得世帯に対する所得補償という新しい政策を人々に納得させる重要な組織であり、既に完了して運用に入ったこのプロジェクトは、CNAFの情報システムを刷新する計画の重要な要素となっています。

(*1) 2009年6月から始まった、生活保護手当制度。

性能とスケーラビリティの要求への適合

コストの制約を満たしつつサービス品質を改善するために、CNAF はより高性能で強力なシステムの調査に注力しました。そのために CNAF が最新化を決定した CRISTAL と SDP という2システムは、急速に進化する戦略的アプリケーションであり、両者合わせて2000万行の業務アプリケーションをサポートし、給付金額を算出して手当てを支払うという基幹業務の中心となっているものです。性能とオープン性についての CNAF の要求水準を満たす新しいデータベースを選択する段階では、PostgreSQL が最良の選択肢となりました。

CNAFの情報システム部門の副理事 Marc Pavie 氏は、次のように説明しました。 「PostgreSQLを選んだことは、オープンソースに対する私たちの公約を再確認することになりました。筆頭契約者であるBull社とともに、難なく移行することができました。PostgreSQLの新しい機能は、われわれの情報システムを最適化することに貢献することで、利益をもたらしました。しかし、このソリューションが提供するもっとも重要なものは堅牢性であり、われわれの業務上の必須事項とサービス品質に関する国家レベルの課題を満たす性能でした」

1日10億以上のSQL文を実行

移行プロジェクトは2008年の10月に始まり、Bull社による実現性の検討、CNAFのチームと共同してのプロトタイプ開発と続きました。2010年4月まで9カ月に及ぶ広範な試験によって、実装のための信頼できる基盤を確立しました。

Bull社のプロジェクトでの貢献

  • プロジェクト管理の支援
  • 設計に必要となる全ての専門知識とシステム・アーキテクチャに関する知見
  • 新しいRDBMSについて多くのチームに施した訓練
  • コードの改造と試験に関する支援
  • PostgreSQLを含む、Novascale(*2) プラットフォーム
  • ソリューション全般のサポート、米国フェニックスにある Bull Expertise センタへのエスカレーションを含む。
(*2)Bull社のメインフレーム機(後出)。

このプロジェクトは全体で18カ月かけて、168のデータベースと4TBに相当するデータを移行しました。完了後は、毎日ほぼ10億SQL文が実行されています。通常の管理業務は自動化されており、システムの監視にはオープンソフトウェアのソリューションである Nagios が使われています。さらに、アーキテクチャには2種類の高可用機能が実装されており、遠隔地のサイトでの業務復旧と近隣サイトでのサービス継続機能があります。

実装が完了して数カ月たち、PostgreSQL データベースはその堅牢性と性能の水準をはっきりと実証しています。結果として、バッチ処理時間とトランザクションの応答時間が短くなり、提供されるサービスの質を改善しています。

Bull社のCEOである Jean-Pierre Barbéris 氏は 「われわれは、ヨーロッパではまだ前例のない、CNAF のプロジェクトをサポートすることができたことを誇りに思っています。得られた利益は、オープンソースツールの並はずれた強力さと堅牢さと同時に、オープンソースツールは組織の最も革新的なプロジェクトをサポートして、財政的に大きなゆとりを作り出す能力があることをも証明したのです」とコメントしました。

業務のインフラストラクチャを支える Novasclae gcos 9100 サーバ

これと並行した最初の6ヶ月間で、CNAFは gcos と Linux 上で稼働していた多くの業務リソースを Novascale gcos 9100 サーバが備えられたデータセンタに集約しました。これは、最高のメインフレーム技術と PostgreSQL のようなオープンワールドの利点をともに実現した、Bull社の次世代のメインフレーム級サーバです。

訳者ノート

この記事は、Bull社の関係者に確認のうえ、 広報記事を翻訳したものです。 オリジナルの記事にない図表類は、PGDay Europe 2010 での Philippe Beaudoin 氏の [PDF] 発表スライドを参考に訳者が作成しました。 Beaudoin氏のスライドには、この移行作業の技術的側面がより詳しく説明されています。 末筆ではありますが、関係者の皆様に感謝します。


(2011年4月21日 公開)

 

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