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PostgreSQL普及の課題と展望

NTT オープンソースソフトウェアセンタ 坂田 哲夫

第2回 PostgreSQL普及の課題と展望 ― 商用サポートの動向とコミュニティの活用

普及する上での課題

この記事の第1回では PostgreSQL の普及の現状について報告しました。まとめると、次のようになります。

  1. すでに、30%以上の IT 企業で PostgreSQL を業務として利用しており、近いうちに半数近い企業が利用する見込みです。
  2. 近年増えつつある、Oracle からのデータベースの移行先としては、OSS の DBMS では圧倒的に PostgreSQL が選ばれる傾向があり、MySQL が普及していると考えられる Web アプリケーションの分野でも MySQL と同程度には利用されていると見られます。
  3. PostgreSQL が選ばれる理由は、その機能や性能が十分実用に耐えるレベルに達しているためである、と考えられます。
  4. 今後、PostgreSQL に対する各種のサポートサービスが充実すれば、より一層の利用が期待できます。

PostgreSQLをよりいっそう普及させる上での鍵となるのは、上の4番に挙げられている「各種のサポートサービス」でしょう。そこで今回は、このサポートサービスについて、どのようなサービスが利用できるのか、コミュニティの提供する情報などの動向について紹介します。

サポートに関する課題と解決策

では、IT企業はOSSに対してどのようなサポートを期待しているのでしょうか? 図1は2008年のIPAの調査(第1回の情報源[1])による、IT企業から見たOSSサポートの課題です(回答数703社、上位5件のみ表示)。これらの課題は「外部から購入するサービス」と「自社でサポートする際に利用するサービス」の2種類に分けられます。種類ごとに課題を掘り下げて、解決策を検討してみましょう。

利用の課題
図1:IT企業から見たOSSサポートの課題

外部から購入するサービス

サポートの種類として第一に考えられるタイプは、自社でOSSを利用する際に、外部からサポートサービスを購入するものです。図1の選択肢(a),(b),(e)が該当します。これらの課題を解決するには、利用できるサービスの充実度が鍵となります。

PostgreSQLの商用サポートサービスについてインターネット上で調べてみると、少なくとも7~8社の企業から提供されています。そのうち2社は2004年にサービスを開始し、2006年、2008年、2009年に各1社が参入しており、順調に伸びていることが窺われます(表1を参照)。

表1:PostgreSQLの主な商用サポート
企業名(敬称略・50音順) サービス名称等 開始年
株式会社アシスト PostgreSQLプロダクトサポート・サービス 2009[1]
SRA OSS,Inc. 日本支社 PostgreSQL/Powergres サポート&保守サービス 1999[2]
NTTデータ先端技術株式会社 トラブルシューティング(OSS) 不明
株式会社コンバージョン OSS構築・保守サポートサービス 不明
日本電気株式会社 PostgreSQLサポートサービス 2004[3]
株式会社野村総合研究所 OpenStandiaTM/ PostgreSQL関連サービス 2006[4]
株式会社日立システムアンドサービス オープンソースサポートサービス 2004[5]
株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ OSSミドルウェアサポート 2008[6]

表1を見ると、サポートに関しての課題(b)「サポートを受けられる先が少ない」は、ほぼ解決されていると言えるでしょう。また、それらのサービスの中には「情報提供」と「障害対応等」などのサポート内容を分けて提供するものがあり、課題(e)「必要なだけ柔軟に受けられる」こともある程度は可能なようです。ただし課題(a)にある「緊急時の」サポートをメニュー化して提供する企業はまだないようです。この点は、PostgreSQLのサービスに参入する企業の増加やPostgreSQL自身の普及とともに改善されることが期待されます。

自社でサポートする際に利用するサービス

もう一つの種類のサポートとしては、自社でOSSをサポートする際に利用する、外部の情報源が挙げられます。図1の回答(c),(d)はOSSを利用していく上で欠かせない各種の情報に関する課題と考えられます。

この点について、先のIPA調査では「技術サポートやライセンスに関わるOSS利用促進施策で実際に利用したいもの」を質問し、図2に示すような回答を得ています(回答数630、回答率が20%以下の項目は略す)。

利用したい施策
図2:技術サポート・ライセンス関連で利用したい施策

図1と図2で、OSSに関する情報源に対する課題を見てみると、参考になる資料を日本語で探して活用できることが、OSS利用の際の条件になっていることが示唆されます(図1の(c),(d)、図2の(b),(c))。PostgreSQLの場合は英語のマニュアルが整備されており、基本的には十分な量と精度の情報が提供されています。それらの日本語訳[7]も、英語版の公開から数日以内に公開されています。このことは日本国内でのPostgreSQLの利用に大きく寄与するものとして、IPAの表彰を受けました[8]

また、図1の(b)「OSS技術資料が整理されたポータルサイト」については、まだ十分ではありませんが、当サイト Let's Postgres でも技術情報を紹介しています。先日のサイト開設1周年の記事でも紹介したとおり、入門記事やインストール方法の紹介に始まり、より技術的なトピック(ロケールの設定、チューニング手法、XML機能の使い方など)まで各種の記事を掲載しています。ぜひご活用ください。

自社でOSSをサポートする際には、当然、そのための技術者が必要となります。2008年のIPAの調査(第1回の情報源[1])では、IT企業に対してOSSを担当する技術者が足りているかを質問し、46%の企業から「不足」という回答を得ています(足りているIT企業は9%未満)。そこで、サポートも含めて、OSSの技術者を教育する必要が出てきます。

図3に、IPAの調査による、ITに企業におけるOSS技術者の教育方法について示します(回答数752、20%未満の回答は省略)。

OSS技術者の教育方法
図3:OSS技術者に必要な能力をつけるための取り組み

この図3を見ると、企業によるOSS技術者の教育方法は、(a)OJT、(c)の社内研修のように企業の中に閉じたものと、(b)外部研修、(d)資格取得、(e)社外勉強会・企業交流会のように企業の外部のサービスを利用するものに分けられます。では、PostgreSQLの場合には、どのような外部のサービスがあるのでしょうか。

研修については、 Let's Postgresのイベントのページに、さまざまな研修が紹介されています。また、PostgreSQLに関する資格としては、PostgreSQL CE があります[9]

コミュニティベースの活動としては、上記の(e)社外勉強会・企業交流会に該当するものに、ユーザ会(JPUG)の支部や分科会が開催する各種の勉強会があります。支部や分科会等の主催者が、それぞれ1年に数回の勉強会を開催しています。これらの勉強会は規模も内容もさまざまですが、ユーザ会での最近の試みとしては、会場に直接来られない希望者のことも配慮して、インターネットのストリーム中継を活用する動きがあります。これには実質的な開催回数が増える効果があります。現在は試行段階ですが、今後は広く行われるようになるものと期待されますので、Let's Postgresでも開催情報を積極的に案内したいと思います。

まとめ

PostgreSQLの利用の現状をまとめた前回に続いて、今回は利用上の大きな課題となっているサポートの問題について、さまざまな側面から現状で利用できるサービスと、今後の展望についてご紹介しました。

  1. 商用のPostgreSQLサポートサービスについては、現時点で数社から提供されており、今後も増えることが期待される。
  2. 自社でサポートを行う上で欠かせない情報源としては、日本語マニュアルや当サイト(Let's Postgres)など、日本PostgreSQLユーザ会の提供する情報を活用することができる。
  3. OSS技術者教育のための道具としては、商用の研修サービスや認定資格がすでに提供されている。またコミュニティの勉強会も盛んであり、今後はネット中継等でより一層アクセスしやすくなることが期待される。

以上2回にわたり、PostgreSQLのユーザ動向と利用上の課題と展望について紹介しました。お読みいただきありがとうございました。

情報源

今回の記事で参照した情報は次の通りです。なお、インターネット上の情報については2009年12月20日~25日に閲覧しました。

  1. 株式会社アシスト, SRA OSS Inc., SRA OSSとアシストが、オープンソース・ソフトウェア「PostgreSQL」支援サービス提供で提携, 2009.
  2. 日経BP, SRA、オープン・ソースのDBサーバ「PostgreSQL」の有償サポートを開始, 1999.
  3. 日本電気株式会社, 「OSSミドルウェアサポートサービス」の開始について , 2004.
  4. 株式会社野村総合研究所, オープンソース・サポートサービス「OpenStandia」を拡充, 2006.
  5. 日立システムアンドサービス, オープンソース導入コンサルテーションサービスの提供開始, 2004.
  6. 株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ, 「OSSミドルウェアサポート・サービス」の提供開始, 2008.
  7. PostgreSQLグローバル開発グループ、訳:日本PostgreSQLユーザ会 文書・書籍関連分科会, PostgreSQL 8.4.2 付属ドキュメント, 2009.
  8. 独立行政法人 情報処理推進機構, 「2009年度日本OSS貢献者賞、日本OSS奨励賞」受賞者を選定, 2009.
  9. SRA OSS Inc. , PostgreSQL CEとは.

(2009年12月29日 公開)

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