サンフランシスコのPostgreSQL事情
石倉みほ
はじめまして
私の名前は石倉みほといいます。出身は島根県。サンフランシスコのPostgreSQLユーザ会を主催しています。JavaとRubyを使い、PostgreSQLをバックエンドデータベースとしたWebアプリケーションが得意分野です。また、XP(エクストリーム・プログラミング)やTDD(テスト駆動開発)が大好きでもあります。
東京で5、6年働いたあと、サンフランシスコに引っ越してきたのが4年前でした。バージョン7.2の頃からPostgreSQL を使ってきて、それからずっとPostgreSQLを使っています:)。現在はezRez Software, Inc.とPostgreSQL Experts, Incに勤めています。ezRezという会社はよくSFPUG (San Francisco PostgreSQL User's Group)に会場を提供しています。PostgreSQLの集まりのようなオープンソース活動に会社として貢献できることはとても光栄なことです。ささやかなことですが、これは我々が今PostgreSQLコミュニティにお返しできることなのです。
SF SF SF!
サンフランシスコはアメリカの中で最も観光客が訪れる場所の一つで、世界中からたくさんの観光客が来ます。サンフランシスコは、とても左向きでリベラルな思想で有名な街です。たとえば、政治観、同性愛者の人権、環境への配慮(ハイブリッド自動車、自転車、リサイクルなど…)にそのような思想が見て取れます。サンフランシスコの一番好きなところは「ごった煮の文化」です。南米、アジア、インドやヨーロッパなど、いろんな国の文化が混じっています。この気質がサンフランシスコをリッチで面白くしているんです。オマケに食べ物もすごく美味しいのです。
そしてもちろん、シリコンバレー。サンフランシスコはシリコンバレーの一部で、市内や1時間圏内に著名なIT企業がたくさんあります。サンフランシスコの住人がコンピュータ関係の企業に勤めることはよくあることで、街を歩いている時、レストランや街のいたる所で、技術に関する会話をよく耳にします。この経済状況でも、たくさんのスタートアップ企業が生まれています。面白いことに、日本でエンジニアというとオタクっぽい風貌を想像すると思いますが、サンフランシスコのエンジニアはオタクっぽくないんです。もちろんそういう感じの人もいないことはないですけどね:)。
アメリカでのPostgreSQL
日本では、PostgreSQLというと小さな規模からエンタープライズレベルまで使えるデータベースとしてのイメージが確立されています。しかし私の見るところ、アメリカではどうも同じ状況とは言えないように思います。いまだにPostgreSQLのことを聞いたことがない、というエンジニアに会うことがあります。コンピュータの街サンフランシスコでも、PostgreSQLを扱えるデータベース管理者を雇うのは簡単なことではないのです。データベース管理者が一度PostgreSQLに触れると、感銘を受けてこう質問してくることがあります。「どうしてPostgreSQLはこんなに知名度が低いの?」 私はいつもそういった質問に答えることができないでいます。おそらくは、宣伝とか、Windows版のサポート、リプリケーション、ダウンタイムなしにアップグレードする手段がないから、といった理由からではないかと想像しています。でも正直にいって、なぜPostgreSQLに人気がないのかについては、大きな謎のままです。
SFPUG (San Francisco PostgreSQL User's Group)について
ここではPostgreSQLの知名度は日本ほど高くありませんが、SFPUGはとてもうまくいっています。ユーザ会では、主にサンフランシスコ市内やイースト・ベイ(オークランドやバークレイ地区)で毎月会合を開いています。会合にはいつも20人から30人の参加者があります。毎月、有志がプレゼンテーションを提供してくれます。ケーススタディや、PostgreSQLを使ったアプリケーションの紹介、PostgreSQLの特定の機能紹介などが主な内容です。最近では、PostgreSQLを使ったクラウド・コンピューティングや、PostGIS、PostgreSQLを使ったBIシステム、PostgreSQLのスケーラビリティとRuby on Railsを使ったシステムについての発表がありました。
SFPUGはどんな雰囲気かというと、まず、発表者と会合のホスト企業が食べ物と飲み物を提供します(写真はこのときの中華料理です。美味しい!)。たいてい、PostgreSQLのリリーススケジュールといったニュースやお知らせ、ベータテスト協力をお願いをしたり、次のマイナーバージョンアップの話題、近々開催されるカンファレンスについて話したり、誰かが技術者を探している、といったことで会は始まります。次に、プレゼンを行ないます。だいたい、長くて45分くらいです。会の最後には、Tシャツなどを売って寄付を募ります。会が終わると、さらなる議論のために飲みに出かけます:)。
SFPUGの集まりには、Josh BerkusやDavid Fetterのような常連参加者やPostgreSQL開発者、PostgreSQLを使っているデータベース管理者や(私のように)日々PostgreSQLを使っている人たちがいつも参加しています。会に毎回新しい顔が訪れるのもうれしいことです。私たちはいつも新しいメンバーを歓迎していますし、PostgreSQLの達人たちを満足させるように心がけています。SFPUGには、議論がしやすく、意見を交換したり人間同士のつながりを作ったりしやすい雰囲気があります。外部からの評判もとてもよいのです。
今年に入り、SFPUGの会合は新しい時代に入りました。会の模様をストリーミング配信し始めたのです。来られない人が会合の模様をその場で見て、質問ができるように、会の間にビデオを撮っているのです。撮ったビデオは、世界中の誰でも好きなときに会に参加できるようにWebサイト にアップロードしています。
こちらのWebページ では、会への参加登録をしたり、スケジュールや開催場所を確認したりできます。このような仕組みを使うことは、会を組織したり、オープンに運営をするにあたって大切なことだと考えています。SFPUGのドアはみなさんに開かれているんです!
最後に
アメリカのPostgreSQLコミュニティと、ワクワクしながら密接に関わってきました。PostgreSQLに関わるたくさんの人とも会いました。最近、私はカナダのオタワで開催されたPGCon にはじめて参加してきました。最近の経済状況で多くのカンファレンスが参加者を減らす中、今年のPGConは参加者を増やし、私はとても勇気づけられました。オープンソースの精神を広め、コミュニティも技術も発展を続けるこのすばらしいオープンソースソフトウエアに関われることはとても光栄なことです。多くの協力や貢献がなかったら、PostgreSQLはデータベースやオープンソースのリーダーとして存在してこれなかったでしょう。私たちのPostgreSQLの未来はとっても明るいと思います!
※本記事は英語版もあります