PostgreSQL 超入門 第1回

PostgreSQL 超入門 第1回(1)

NTT オープンソースソフトウェアセンタ 鈴木幸市
SUZUKI, Koichi

この記事は、PostgreSQL とは何か、リレーショナルデータベースとは何かをわかりやすく説明するためのものです。
もしあなたがデータベースについて聞いたことがない、あるいは、言葉くらいしか知らないのであれば、そして、これからデータベースに関わっていくのであれば、ぜひこの記事を注意深くお読みいただきたいと思います。
記事の記述内容で分かりにくい、不適切な部分、もっと知りたいことなどございましたら、ぜひ著者までご一報下さい。なるべく早い時期にこの記事に反映したいと思います。
 
【第1回】データベースとデータベース管理システム
1.1 データベース管理システムが扱うデータ
1.2 データーベース管理システムとアプリケーション
1.3 データベース管理システムはデータベースを守る
1.4 データベースを使うと何人もの人が同時にデータベースを使える

【第2回】PostgreSQL って何?

【第3回】リレーショナルデータベースと DBMS 超入門
 

第1回 データベースとデータベース管理システム

データベースとは、大量のデータをコンピュータシステム上で扱えるように集めたものです。データベース管理システムとは、

そのデータベースを効率よく読み書きするためのソフトウェア

のことです。DBMS(DataBase Management System)と呼ぶこともあります。

ここで「大量」とは、Excel などの表計算ソフトで扱える件数をはるかに超える、数千万件、数十億件の数のデータのことをいいます。私たちの普段の生活のまわりにもこのような大量のデータがたくさんあります。

1.1 データベース管理システムが扱うデータ

データベース管理システムは、何千万件、何十億件といったデータの読み書き・管理を行う

データベース管理システムが扱うデータには、例えばインターネット通販におけるお客様毎の受注情報や、銀行口座毎の取引履歴情報などがあります。こういった例を考えてみれば、データの件数が数千万件から数十億件というのもうなずけると思います。これをデータのサイズになおすと、数百ギガバイトから数十テラバイトといったものになります。

データベース管理システムは、このような大量のデータを「データベース」に集めて、アプリケーションに代わって読み書き、管理を行うソフトウェアなのです。表1-1にデータベースに格納するデータの例を示します。これ以外にも多くの例を考えることができると思います。

表1-1 ● データベースが扱うデータの例
アプリケーション データの例
インターネット通販 商品リスト、販売価格、仕入先、仕入れ価格、お客様情報、受注情報、在庫、出荷など
銀行 口座、お客様、口座ごとの取引情報など
行政 住民票、税金、各種登記
チケット予約 イベント情報、会場、座席、価格、販売状況
会社 人事、経理、資産、備品
学校 学籍簿、履修簿、成績

データベース管理システムが提供する機能は、大量データの格納に止まるものではありません。これは第3部で解説します。

1.2 データーベース管理システムとアプリケーション

データベース管理システムが実際にデータを収集したり、データの読み書きを行うためには、どのようなデータをどのような形でデータベースに入れるかをあらかじめ決めていなければなりません。データの内容や形式、件数は用途によってまったく異なっています。

このようなデータ内容、形式、件数などを決める用途のことを広い意味で「アプリケーション」とよびます。データベースに具体的なデータの読み書きを指示するプログラムのことは「アプリケーションプログラム」あるいは単に「アプリケーション」と呼びます。

つまり、データベースはその用途が具体的に決まらないと作れないのです。データベース管理システムは、種々の用途に応じてアプリケーション、具体的にはアプリケーションを構成する種々のアプリケーションプログラムになりかわってデータベースを作ったり、データの読み書きをしてくれるソフトウェアなのです。データベース管理システムを動かしてデータベースを使うには、アプリケーションプログラムを作らなければなりません(図1)。(注:汎用的なアプリケーションでは、データベースの用途やアプリケーションプログラムは作成済みなので、使用する際にデータベースの詳細を決める必要はほとんどありません)。

図1-1 ● DBMS はアプリケーションプログラムに代わりデータベースを管理する